OpenStack はオープンソースプラットフォームで、OpenStack を使うと、コモディティハードウェア上で動作する Infrastructure as a Service (IaaS) クラウドを自分で構築できます。OpenStack はスケーラビリティを意識して設計されており、運用するクラウドが大きくなるのに合わせて新しいコンピュートノードやストレージノードを簡単に追加することができます。 HP や Rackspace などの組織では、OpenStack を使って巨大なパブリッククラウドを構築しています。
OpenStack は、そのまま実行する単なるソフトウェアパッケージではなく、数多くの様々な技術を組み合わせてクラウドを構築することができます。このアプローチは非常に柔軟性がありますが、このため多くの選択肢があり最初は面食らうかもしれません。
このガイドは、Linux ディストリビューションの Ubuntu、SQL データベースや仮想化に関してよく知っていることを前提にしています。複数台の Linux マシンのネットワーク設定・管理にも慣れている必要があります。MySQL データベースのインストールと管理を行い、場合によってはデータベースに対して SQL クエリーを実行することもあります。OpenStack クラウドの最も複雑な点の一つにネットワーク設定があります。DHCP、Linux ブリッジ、VLAN、iptables といった考え方をよく理解していなければなりません。OpenStack クラウドで必要となるスイッチやルータを設定できるネットワークハードウェアの専門家と話をする必要もあります。
私たちは少なくとも1年以上 OpenStack クラウドを構築し運用してきました。そこで得られた知識を多くの人と共有するために、この本を書きました。 OpenStack クラウドの責任者として数ヶ月がたつと、そのドキュメントを渡しておけば、システム管理者に日々のクラウドの運用をどのように行なえばよいかが分かるようなドキュメントが欲しくなりました。また、クラウドを構築する際に選択したやり方のより詳細な技術情報を共有したいと思いました。
次のような場面であなたの助けとなるように、この本を書きました。
初めての本格的な OpenStack クラウドのアーキテクチャの設計と構築。この本を読み終えると、コンピュート、ネットワーク、ストレージリソースを選ぶにはどんな質問を自分にすればよいのか、どのように組み上げればよいのかや、どんなソフトウェアパッケージが必要かが分かることでしょう。
クラウドを管理する上で必要となる日々のタスクの実行。
私たちはこの本を Book Sprint で執筆しました。 Book Sprint は短い期間で本を建設的に作成できるメソッドです。詳しい情報は、 Book Sprint のサイト を参照して下さい。著者らは2013年2月の5日間でこの本をまとめあげました。カフェインと、テキサス州オースティンの素晴らしいテイクアウトの食事は力になりました。
最初の日に、アイデアを色とりどりのポストイットでホワイトボードいっぱいに書き出し、クラウドを設計し運用するという漠然とした話題を扱った本の作成を開始しました。
私たちは一心不乱に自分たちの経験に基づき執筆を行い、互いに意見をぶつけ合いました。一定の間隔で、本の現在の状況や構成をレビューし、本を作り上げていき、今皆さんが見ているものができあがりました。
以下が執筆チームのメンバーです。
Tom Fifield. LHC で ATLAS のような素粒子物理学実験でコンピューティングのスケーラビリティの経験を積んだ後、現在はオーストラリアの公的な研究部門を支援するプロダクションの OpenStack クラウドに携わっています。オーストラリアのメルボルンに住んでいて、空いた時間で OpenStack ドキュメントプロジェクトに参加しています。
Diane Fleming. 彼女は OpenStack API ドキュメントプロジェクトで非常に熱心に活動しています。このプロジェクトでは自分ができるところであれば、どこでも取り組んでくれました。
Anne Gentle. 彼女は OpenStack のドキュメントコーディネーターで、2011年の Google Doc Summit では individual contributor (個人コントリビュータ) を努め Open Street Maps チームとともに活動しました。Adam Hyde が進めていた FLOSS Manuals の以前の doc sprint にも参加しています。テキサス州オースティンに住んでいます。
Lorin Hochstein. アカデミック出身のソフトウェア開発者・運用者である彼は、Nimbis Services でクラウドサービスの Lead Architect として働いています。Nimbis Service では彼は技術計算アプリケーション用の OpenStack を運用しています。 Cactus リリース以来 OpenStack に携わっています。以前は、University of Southern California's Information Sciences Institute (USC-ISI) で OpenStack の high-performance computing 向けの拡張を行いました。
Adam Hyde. 彼は今回の Book Sprint をリードしました。 Book Sprint メソッドを創設者でもあり、一番経験豊富な Book Sprint のファシリテーターです。詳しい情報は http://www.booksprints.net/ を見て下さい。 3000人もの参加者がいるフリーソフトウェアのフリーなマニュアルを作成するコミュニティである FLOSS Manuals の創設者です。また、Booktype の創設者でプロジェクトマネージャーです。 Booktype はオンラインで本の執筆、編集、出版を行うオープンソースプロジェクトです。
Jonathan Proulx. 彼は MIT Computer Science and Artificial Intelligence Lab で上級システム管理者として OpenStack クラウドを運用し、研究者が必要なだけの計算能力を使えるようにしています。 OpenStack の勉強を加速しようと思い、OpenStack ドキュメントへの貢献とドキュメントのレビューを始めました。
Everett Toews. 彼は Rackspace の Developer Advocate で、OpenStack や Rackspace Cloud を使いやすくする仕事をしています。ある時は開発者、ある時は advocate、またある時は運用者です。彼は、ウェブアプリケーションを作成し、ワークショップを行い、世界中で公演を行い、教育界やビジネスでプロダクションユースとして使われる OpenStack を構築しています。
Joe Topjian. 彼は Cybera で複数のクラウドの設計と構築を行って来ました。 Cybera は、非営利でカナダのアルバータ州の起業家や研究者を支援する電子情報インフラを構築しています。また、これらのクラウドの維持・運用を活発に行なっており、その経験からクラウド環境でのトラブルシューティングの豊富な知識を持っています。
この本の元は人が集まったイベントで作成されましたが、今やこの本はみなさんも貢献できる状態になっています。 OpenStack のドキュメント作成は、バグ登録、調査、修正を繰り返し行うというコーディングの基本原則に基いて行われています。
OpenStack ドキュメント作成プロジェクトに参加する方法については、Documentation How To (http://wiki.openstack.org/Documentation/HowTo) を見て下さい。
バグを見つけたが、どのように直せばよいか分からない場合や本当にドキュメントのバグか自信が持てない場合は、 OpenStack Manuals (http://bugs.launchpad.net/openstack-manuals) にバグを登録して、バグの Extra オプションで ops-guide
タグを付けて下さい。 ops-guide
タグは、そのバグがこのガイドに関するものであることを示します。どのように直せばよいか分かる場合には、そのバグの担当者を自分に割り当てることもできます。また、OpenStack doc-core チームのメンバーがドキュメントバグを分類することもできます。